鹿野道彦 今日の主張

 ◎新型インフルエンザの脅威


8月22日国立感染症研究所の研究員である岡田晴恵医学博士から「強毒性新型インフルエンザ」についての講演を聴く機会があった。

現在、世界中の広い地域で特にインドネシア・タイ・中国・ベトナム等のアジア圏でH5NI型鳥インフルエンザが蔓延しているということだ。240万人以上の感染者と148人の死亡が確認されているという。この鳥インフルエンザに由来して「新型インフルエンザ」がこの秋から冬にかけて出現することが想定されるということである。

2004年、日本でも山口県や京都府などの養鶏場で鳥インフルエンザが検出されたことを思い起こす人は少なくないだろう。当時は鳥からヒトへ、ヒトからヒトへ容易に伝染することはないだろうと言われていたが、2006年インドネシアのスマトラ島で、鳥からヒトへ、ヒトからヒトへの感染連鎖がWHO(世界保健機構)によって確認されたのだ。勿論その後、国連・WHOは警告を発している。先進諸国では政治リーダーにより対策が緊急に進められている。特にアメリカ政府は昨年9月に8300億円の予算を計上し、国民の10日分の食料備蓄や流行時の行動制限等を示し、50州毎の対策と企業・教育機関の対応を勧告しているのだ。日本では政府の連絡会議は作られたが責任体制はまだハッキリしていないようだ。ひとまず抗インフルエンザウィルス薬『タミフル』の2500万人分の国家備蓄を発表しH5NIタイプのベトナムでの患者から採られたウィルスで作るプロトタイプワクチンを1000万人分用意しようとしている段階だ。しかしタミフルは特効薬とはならないし、新型ワクチンの製造には発生してからでないと作れないので6ヶ月はかかるという。

欧米諸国は1910年代に猛威を振るった「スペインかぜ」(世界で5500万人以上が死亡、日本でも45万人の犠牲者)、1950年代の「アジアかぜ」(世界で200万人が死亡)、「ホンコンかぜ」(世界で100万人が死亡)と20世紀におけるインフルエンザ大流行の恐ろしさを忘れてはいないのだ。スペインかぜ・アジアかぜ・ホンコンかぜも全て鳥インフルエンザから変異した新型インフルエンザであった。だから先進諸国はトップダウンの緊急体制を整えている。サッカーワールドカップ・ドイツ大会の選手宿舎で鶏肉を一切出さないなどの措置も採られたほどだ。決して突拍子のない話ではない。決していたずらに「新型インフルエンザ」の恐ろしさを煽るわけでもない。すでに東京都・宮崎県などの自治体では対策が具体的に検討されている。一部の企業でも独自の対策マニュアルが作成されているのだ。

「新型インフルエンザ」が流行してからでは遅いのである。平常時に十分備えをしておくことが国の危機管理にとって最も大事なことであるはずだ。わが国も官僚任せではなく、トップダウンの緊急体制を整えるべきである。政府は出来えるだけの情報を国民に提供し、地方自治体と一体となって緊急事態に備えたプログラムを提示すべき時ではないだろうかと考える。


 | HOME | 

カレンダー

« | 2017-08 | »
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

月間アーカイブ