鹿野道彦 今日の主張

 ◎江戸の芸能を楽しむ夕

 10日、山形市で「江戸の芸能を楽しむ夕」が催された。

江戸伝統芸能の衰退を憂い、わが国特有の貴重な文化の伝承を願う人々が「江戸伝統芸能を守る会」を発足させ、その第一回の公演が山形市で開催されたのである。

会の代表、新内節の人間国宝「鶴賀若狭掾」師匠が、私と刎頚の友と兄弟のような親しい間柄であることから、早々に入場券を送っていただいた。又とないご縁に喜んで会場に足を運び存分に江戸の芸を堪能させてもらった。

 天童市出身の「源吾朗」、山形市出身の「石黒サンペイ」、両人とも日大山形高卒のコメディ笑芸達人。大道芸ガマの油売りや創作芸を披露し、理屈抜きの面白さで会場の雰囲気をもり上げた。郷土出身の芸人の活躍は嬉しい限りである。

 江戸庶民に親しまれた角付け頭に手拭いを乗せて三味線を弾き歩く心内流しは実に粋な風情で、江戸の花街模様を想像しつつ、いつの間にか邦楽の魅力に引き込まれてしまった。

 トリは新内舞踊「くずのは」。立方若柳由美香師の舞踊は、よくぞこれだけの表現が出来るものだなぁ、すごい!とまさに驚きと感動でいっぱいになった。観るものを感動の渦に巻き込む研ぎ澄まされた芸術性と豊かな人間性が融合した由美香師の芸道に、そのたゆまざるご精進に心から拍手をおくりたい。

 若狭掾師匠の心内節の情感溢れるばかりの高ぶりから発せられる声は、美しく張りがあり、のびやかで艶があり、色気と甘さがある。さすが人間国宝だなぁとこれまた驚き!

 江戸時代になぜ日本独特のすばらしい芸が生まれたのか…当時は徳川幕府の統治による封建社会で、士農工商の階級制度が布かれていたにも関らず、江戸に住む人々には、各々の役割と存在を認め合い、助け合い協力し合う心が培われ、日々の生活が活気に満ちていたからではないかと考える。すなわち人間の本質を感じ取りながら人間力を養うことの重要性を知っていたから、暮らしは苦しくとも、大らかでのびのびとした心なりを失うこともなく、むしろ生活に日常的に活気を醸成し、独特な文化を生み出したのではないかと考えられる。

 今日のわが国はどうだろうかと思うとき、江戸人に学ぶことが多々あるような気がしてならない。



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